ワット・ボー小学校 ~ブラッシング指導~
2017年 02月 20日
ワット・ボー小学校ではハミガキに対する学校の取り組みもちゃんとやっているそうだ。
過去にも歯科ボランティアは何度も訪れて、口腔衛生指導を行ったという記録もあるし、これからも予定されている。
広島大学の方々ががんばっておられるようだ。
さっそくこの3月にも活動が予定されている。
とはいえ、今回ブラッシング指導をやってほしいというリクエストを頂戴したので、引き受けた。
年末に5~6歳児約500人対象で、ということだったので準備をはじめた。
それがいつの間にか6年生7クラス450人くらいということになり、そのときはちょっと戸惑った。
5~6歳児と6年生ではハブラシが替わる。
それで間に合わないと困ると思ってどちらでも対応できるよう、ハブラシの注文だけはした。
どちらかというと、低学年のほうが効果的かなと思って、通訳のパンナさんとやりとりした。
ワット・ボー小学校の子どもたちは毎日学校でブラッシングをしているというし。
それでやっぱり1年生7クラスでいきましょう、と決まった。
9時から11時までの2時間で。
できれば歯垢染色をして、視覚的なインパクトを与えたいと思って、方法を考えた。
宇都宮先生が準備してくれている紙芝居もうまく組み込もう。
幸い、今回の活動は参加メンバーがいつもより多いので、きちんと役割分担して、流れ作業にすればいけるんじゃないかと考えた。
ただ、みなさんに役割をきちんと把握してもらい、動いてもらう必要があるので、事前にできるだけ知らせるようにした。
前日にスロラニュ小学校で染色・ブラッシングをしたので、それを手伝ってくれた人をうまく分散させて事前に決めていたチーム編成からメンバーチェンジをした。
2回やって、段取りをよく理解してくれている人を2人ずつ配置。
紙芝居チーム(宇都宮・伊藤・ピッチ)
染色Aチーム(高橋リーダー・猪狩・坊垣・かすみ)
染色Bチーム(須藤リーダー・廣瀬・宇都宮妻・辻本・新居)
紙芝居に引き続き、宇都宮先生に染色の説明までやってもらう(その間、染色チームは準備)。
染色チームは頃合いを見計らって紙コップ+タブレットを配り、続いて手鏡を、最後にハブラシを配る。
その頃に紙芝居チームは次のクラスに移動。
染色チームのメンバーはブラッシングがおおよそできたな、という時点でぼくが終わりのあいさつ。
2組は1組がブラッシングしている間に染色がはじまる。
紙芝居チームが3組に行く頃に1組で終わった染色Aチームが3組の準備をし、紙芝居が終わるのを待つ。
1組あたりの所要時間をトータル30分、15分ずれてスタートしていくというプランで、ちょうど2時間で7クラスできるってわけ。
まあ計画どおりにきっちり進むわけではないと予想していたんだけど、早く終わるぶんにはいいかなと思っていた。
自分なりに準備はしたので、そこそこに指示を出しつつ、写真を撮って、なるようになるさって感じでいこうって。
今回の活動で、ぼくにとっての一番のヤマ。
ちょっとしたチャレンジだ。
1年生7クラスではなく、幼稚園4クラス+1年生3クラスで、ということだった。
幼稚園のクラスからスタート。
10分前だけど、子どもたちは教室で待ち構えてるし、じゃあやりましょう、ということに。
タイムスケジュールがすべて10分前倒し。
その時点で、頭混乱するから時計はあんまり見ずに感覚的にやるか、と思った。
1クラスに60人程度いる。
今回手鏡はちゃんと1人1個渡るように120個準備した。
染色Aチームのみなさんが準備中。
こちらは染色Bチーム。
持ち運びしやすいようにと同じケースを2セット準備していた。
なかなかきれいに収まらず苦労したけれど。
教室では紙芝居がはじまった。
オリジナルの紙芝居、今回も力作だ。
口の中のバイキンは夜、寝ているときに元気になるから、寝る前にしっかり歯みがきしましょうね、という内容(たぶん)。
ここの小学校では、瞑想の時間なんかもあって、幼稚園の子たちもやってる。
落ち着いて話を聞く、ということが教育されているようだ。
子どもたちのまなざしが美しい。
さあ、染色チームの出番。
この年齢だと、タブレットをうまくかみ砕けない子がいるのは想定されていた。
それは日本でも同じ。
言葉が通じてもできない子はできない。
1月に校医を務める小学校で1年生対象にした口腔衛生指導の機会があったんだけど、そこでもどうしても粒を噛めない子がいた。
味が嫌だとか、噛まずに飲み込んでしまうとか、そういう可能性は十分にある。
これだけ人数いたら、そりゃ、いろんな子がいるから。
前歯の交換がはじまってる。
幼稚園にいるからといって5歳とは限らないけれど、交換時期の性差は世界共通かな。
歯みがき習慣はちゃんとあって、ハブラシを買うお金もある。
ここの子たちはそういう子たち。
でも、生まれてからここまでのシュガー・コントロールは十分とは言えない。
口の中を見ると、一目瞭然だ。
乳臼歯の隣接面が崩れはじめている子は多い。
ここの小学校に通うようになって改善して、カリエスの進行がゆるやかになりますよう。
次のクラス。
ここは染色Bチーム。
ぼくが行った頃には紙芝居は終わっていた。
担任教師が協力してくれないと、うまくいかない。
何も言わずに協力してくれて、助かった。
担任によってクラスの雰囲気が違うのはどこも同じ。
教師って、子どもに及ぼす影響力が大きい重要な職業だ。
ああ、制服を汚してしまった。
後で保護者からこの件でクレームの電話がかかってきて、パンナが対応してくれた。
甘かったと思う。
もちろん日本だとあらかじめ汚れてもいい服装で来て下さいとか、タオルを持たせてくださいとか、事前にプリントで連絡する。
こっちだとそこまで必要ないだろう、と高をくくっていた。
申し訳なかった。
2組目終了。
なかなかスムースだ。
この頃3組目では紙芝居が終わり染色Aチームが動いてくれている。
左利きの子が多いように感じたのは気のせいだろうか。
「次のクラスは休み時間だけど待ってくれてるから急いで」という声がかかった。
休み時間まで計算に入れてなかった。
あらかじめ伝えられていたら考慮に入れたと思うけれど。
その場は紙芝居チームにあとやっておきますので行って下さい、みたいな感じでしのいだ。
通訳のパンナが教室にいなくて外に出て他の人と話していたり、まあいろいろあります。
通訳なしでも終わりの合図は伝わるから、ま、いっか。
4組目はBチーム。
予定より早いテンポで進んでる。
今度は1年生のクラスがもう一つ並びにあるんだけど、そこはどうします?と。
問題はハブラシが足りるかどうか。
ある程度余裕を持たせていたけど、1クラス分は微妙。
人数次第。
できたらやりたいと思った。
それはみんな同じ気持ち。
よし、やりましょう。
となると、担当はBチームですな。
いいと思うな。
4組目終了。
ここまでの所要時間、ほぼ1時間。
1クラス追加でもいけそう。
次は1年生。
Aチームががんばってくれてる。
学年が一つあがって小学生になるだけで雰囲気が違う。
少し人数も減る。
ちゃんとマイハブラシとマイコップ、マイペーストが机の上に。
ハブラシのサイズがちょっと気になるね。
大半の子が大人用。
子ども用のハブラシをプレゼントするから、使ってね。
さあ、鏡でよく見ながら、ブラッシングしよう。
1年生2組目へ。
Bチームのお姉様方が子どもたちとふれあっててちょっといい感じ。
教師経験者が中心のBチーム。
教えるの得意です。
1年生3組目はAチーム。
うちの娘もがんばってくれております。
口の中見たらむし歯多くてびっくり~と話しておりました。
たいへん申し訳ないけれど、今回ぼくはあまりじっくり子どもたちの口の中を見る余裕がなくて。
第一大臼歯の様子をチェックしたかったんだけど。
この子たちは萌出直後の年頃。
カリエスに罹患していないことを祈る。
カンボジア人の成人でよくあるのが、第一大臼歯は崩壊してて、第二大臼歯が近心傾斜してるケース。
小学校にあがってからはみがき習慣が身について、側方歯群交換期以降はカリエスが初発してないという口腔内。
この子たちは第一大臼歯の崩壊が起こりませんよう。
ここで授業の合間の休み時間。
こんな子たちに囲まれたら、心奪われるよね。
お、手洗い場で子どもたちがはみがきしてる。
まずこの設備がすばらしい。
村の小学校では水道設備がなかなか整備されていない。
ワット・ボー小では手洗いもしっかり教育しているそうだ。
児童数に対して水栓の数は少ないだろうけど、そこらへんは日本と比べたらあかん。
この年齢だと、指導用模型に興味を示してくれる。
そこは日本と同じ。
紙芝居チームのお二人、あと1クラスです。
よろしくお願いします。
さあ最後のクラス、スタート。
10時25分なので、ゆっくりやってもちゃんと時間内におさまりますよ。
「みなさんの歯を守るために日本からやってきました」
本日8回目。
自分なりのセリフややり方が出来上がってきます。
誰かのまねではなく、自分の言葉で。
紙芝居に描かれた子どもたちが来ているのは、ここの小学校の体操服。
子どもたちもそれをわかって、身近に感じたんじゃないかな。
身を乗り出してる子もいる。
染色Bチームが最後の任務。
といってもラストなのでAチームのメンバーも参加して。
子どもたちに、どんなインパクトがあったかはわからない。
ここの子たちはこういうのが初めてではないだろうから。
でも、この子たちの笑顔に触れることができて、ぼくはうれしい。
このクラスで最後なので、宇都宮先生に締めくくりまでやってもらった。
紙芝居ばっかりだったからね。
一応、あらかじめこれだけのことは説明してあげて下さい、というようなメモは渡しておいた。
ひらがなだけで書いたものを通訳のピッチにも。
メモに書いたのは染色の説明についてのみ。
楽しみながら、ブラッシング指導をしてくれたと思う。
「こういうのをやってみたかった」という宇都宮先生の夢が少しでも叶ったならそれはとてもステキなことだ。
手鏡を回収したら、最後のあいさつ。
全員に手鏡が渡るように、というのが今回実現できた。
手鏡はジョイント部がない方が使いやすい。
壊れないし。
これから買い足すときはそういうことも考えて揃えていこう。
ハブラシを配るときには、あらかじめ封は開けておくことも。
小さな子はうまく袋を開けられないから。
ひたすらハブラシの封を開けてくれてた人がいた(聞いた話で恐縮だけど)。
日本の未来を憂うこのお方。
参加したメンバー全員がそれぞれに自分の持ち場を守り、役目を果たす。
なかなかのチームプレイだったと思う。
自主的に動いてくれたみなさんに感謝。
10時50分に終了した。
ちょうど2時間。
トータルで8クラスで、463名(高橋隊長がカウントしてくれた)。
幼稚園児については、午前の部に来ている子については全員にできたことになる(それで全園児の半分)。
1年生は1120人在籍しているということなので、4クラスだと220人ほどで、20%程度。
ごく一部の子どもに対してしかできてないけど、許してもらおう。
広島大学で国際医療支援をされている学生さんのコメントを見ると、立派だなあと思う。
「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」というのは国際協力の場でいつも言われる。
「自己満足ではだめ。押しつけの支援では本当の役には立たない」というようなことも。
でも、ぼくは、魚が必要な人もいるし、と思うし、どうしても自己満足を求めてしまう。
モノやお金がなければ欲しいだろうし、そもそも自分自身、まずは自分の人生、自分のやりたいことを、と。
自己満足でいいじゃないか、とさえ思う。
異国の地で仲間と出会い、力を合わせて達成感を感じて。
本当に大きく動かすのは政治家の役目。
大学と大学が協力して、組織が動けば、政治も動くかもしれないから、ぜひとも大学の方にはがんばっていただきたい。
ぼくはただの個人開業医なので、ほんとうにちっぽけなことしかできない。
それでいいと思っている。
今回一緒に参加した娘が感動して、今後彼女の人生が豊かになってくれたらうれしい。
18歳でこの経験をしたことでものの見方や考え方が少し広く、少し深くなってくれたらいいなと思う。
一緒に参加した日本人がここでの経験を生かしてこれからの日々の暮らしに向き合うことから。
本当に自分にとって大切なことは何なのか。
大切な人は誰なのか。
こういう活動に参加すると、いろんな思いが頭の中を巡る。
それだけでも価値があるね。
ピアニカ寄贈とブラッシング指導に対する感謝状の贈呈。
今回の一番のヤマが終わってホッとした。
まあ何事も、経験ですね。
by srolanh
| 2017-02-20 11:08
| 現地活動